「あれ?うちの子、最近よくお水飲んでるかも…?でも、すっごく元気だし、ご飯もモリモリ食べるし…気のせいかな?」
愛猫が楽しそうに遊んでいるのを見ながら、ふとそんな風に思ったこと、ありませんか?元気いっぱいな愛猫。
でも、お水のボウルが空になるのが前より早いかも…なんて、ちょっとした不安が心に芽生える。
実はこれ、猫専門の獣医さんからすると、とってもよくあるご相談で、そしてすっごく大事なことなんです。
この記事では、「猫がたくさんお水を飲む」っていう行動の裏に何が隠れているのか、獣医さんの視点から、とことん分かりやすくお話ししますね。
元気だからって見逃しがちな、実は怖い病気のサインと、ストレスとの見分け方、そして今すぐお家でできることまで、愛猫の健康を守るためのヒントを全部お伝えします!
猫って、ご先祖様から受け継いだ「本能」で、体調が悪いことを隠すのがとっても上手なんです。
野生の世界では、弱っている姿を見せたら敵に狙われちゃうから、ギリギリまで平気なフリをするんですよね。
だから、飼い主さんだけが気づける「お水を飲む量が増えた」っていうのは、病気のいちばん最初の、そしてたった一つのサインってことも、少なくないんですよ。
うちの猫ちゃん水をよく飲むけど…飲みすぎ?その目安を知ろう!

ちの猫ちゃん水をよく飲むけど…飲みすぎ?その目安を知ろう!
どれくらいからが「飲みすぎ」なの?
まずは、愛猫のお水の量が本当に「多い」のか、ちゃんと判断できる基準をチェックしてみましょう。
獣医さんの世界では、猫が1日に必要な水分量は、だいたい体重1kgあたり45〜60mlって言われています。大事なのは、これってウェットフードに入ってる水分もぜんぶ含めた量ってこと!
そして、「多飲」っていって、病気の心配が出てくるのは、体重1kgあたり1日に80〜100ml以上のお水をずーっと飲み続けている場合。
例えば、体重4kgの猫ちゃんが毎日400ml以上飲んでいたら、何かの病気が隠れている可能性がかなり高いって考えられます。
ちなみに… この数字は、いろんな獣医さんのサイトで言われている、獣医学の世界での共通認識みたいなものです。
それに、飲む量全体が基準より少なくても、前と比べて急に2倍以上になった!なんて時も、注意が必要なサインですよ。
まずはこれから!お水の量を正確に測ってみよう
「なんとなく増えた気がする…」っていう感覚を、はっきりした数字に変えるのが、解決への第一歩!次のステップで、愛猫が飲んだお水の量を測ってみましょう。
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朝、1日の始まりに、計量カップで決まった量のお水(例えば500ml)をボウルに入れます。
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24時間たったら、ボウルに残ったお水をもう一度計量カップで測って、最初の量から引き算!これが1日で飲んだ量です。
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ポイント! エアコンでお部屋が乾燥していると、お水って蒸発しちゃうんです。もっと正確に測るなら、猫が飲めない場所に同じ量のお水を入れた「見張り役」のボウルを置いてみて。そこから蒸発した分を、猫が飲んだ量から引けば、もっと精度がアップしますよ!
猫ちゃんだって、その日の気分で飲む量はちょっと変わるから、この測定を2〜3日続けてみて、平均の量を見るのがおすすめです。
ボウルだけじゃない!トイレの中にもヒントがあるよ
「たくさん飲む(多飲)」と「たくさんおしっこする(多尿)」は、いつもセットなんです。
飼い主さんは「トイレ探偵」になって、こんな変化がないかチェックしてみて!
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おしっこの塊が、前より明らかに大きい&重い! (50mlのおしっこでできる塊の大きさを知っておくと、比べやすいかも)
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1日のトイレの回数(塊の数)が増えた。
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おしっこの色が薄くて、あんまりニオイがしない。(これ、腎臓の機能が落ちてるかもっていう大事なサインなんです)
こういう観察や測定って、ただの記録集めじゃないんですよ。
動物病院って、猫にとってはドキドキする特別な場所だから、そこでの様子は「点」でしかないんです。
でも、お水をたくさん飲むみたいな大事なサインは、お家でのリラックスした生活っていう「線」の中で現れるもの。「うちの4kgの子、昨日300ml飲みました!」っていう具体的な数字は、「最近よく飲む気がします」っていうフワッとした感覚より、何倍も診断の助けになります。
この一手間で、あなたは心配するだけじゃなく、愛猫の健康を守るチームの大事な一員になれるんです!
元気そうに見えても…実はこんな病気が隠れているかも

元気そうに見えても…実はこんな病気が隠れているかも
飼い主さんがいちばん戸惑うのが、「元気なのに、お水をよく飲む」っていう状況。
でもね、これこそが多くの病気の静かな始まり方なんです。さっきも話したけど、猫ちゃんは本能で病気を隠します。
「多飲多尿」は、体の中で起こっているトラブルを、なんとか体が自分でバランス取ろうとしている、最初のサインなんです。
ぐったりしたり、ご飯を食べなくなったり…誰が見ても「おかしい!」って思う症状が出たときには、病気がかなり進んじゃってることも多いんですよ。
1. 慢性腎臓病 (CKD)
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体のナカミ
猫ちゃんの腎臓って、すごく性能のいいコーヒーフィルターみたいなもの。
健康な時は、いらないものだけをこし取って、大事な水分はちゃんと体に戻します。
でも、腎臓病になると、このフィルターに穴が空き始めちゃう。
いらないものをちゃんと捨てられないのに、大事な水分はどんどん外に出ていっちゃうから、薄いおしっこがたくさん作られます。
体はカラカラになるのを防ごうと必死で、「お水飲まなきゃ!」って喉が渇くんです。 -
知っておいてほしいこと
高齢の猫ちゃんにすっごく多い病気で、15歳以上の3匹に1匹はかかっているとも言われます。
猫はもともと、腎臓のフィルターの数が少ない動物だから、一生を通じて負担がかかりやすいんです。 -
他のサイン
少しずつ痩せてくる、毛のツヤが悪くなる、吐いちゃう、口からアンモニアみたいな独特のニオイがする、など。 -
飼い主さんの声
「8歳のとき、おしっこの塊がリンゴみたいに大きくなってるのに気づいたんです。
他はすごく元気だったけど、念のため病院に行ったら、腎臓病の初期だって。
あのトイレの変化に気づけたから、早くから専用のご飯を始められました。」
2. 糖尿病
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体のナカミ
糖尿病になると、血液の中にある糖分(エネルギーのもと)が、体の細胞に入れなくなっちゃう。
血の中は糖分だらけになって、体は「大変だ!」って、おしっこと一緒に糖を捨てようとします。
でも、糖ってスポンジみたいに水を吸い寄せるから、おしっこと一緒に大量の水分も出ていっちゃうんです。それで体はカラカラになって、ものすごく喉が渇くんですね。 -
特徴的なサイン
いちばん分かりやすいのは、「いっぱい食べるのに、痩せていく」こと。
いくら食べてもエネルギーにならないから、体はずっとお腹が空いている状態なんです。 -
他のヒント
後ろ足がふらつく、床にこぼれたおしっこがベタベタする、なんていうのもサインかも。 -
飼い主さんの声
「健康診断のとき、何気なく『最近、おしっこがベタつく気がする』って先生に話したんです。
それがきっかけで糖尿病が分かって!早く見つかったから、今は食事に気をつけるだけで元気に過ごせてます。」
3. 甲状腺機能亢進症
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体のナカミ
これは、体のエンジンがずーっと全開になっちゃってるような状態。甲状腺ホルモンが出すぎて、全身の代謝が異常に活発になります。
心臓はドキドキ、血圧も上がって、腎臓もフル回転!だからおしっこがたくさん作られて、その分お水をたくさん飲むようになります。 -
「元気」のワナ
この病気、不思議なことに、高齢の猫ちゃんがなんだか若返ったみたいに、すごく活動的になることがあるんです。急に走り回ったり、夜中に大声で鳴いたり、攻撃的になったり。
「うちの子、若返ったのかしら?」なんて思っちゃうけど、実はそれ、ホルモンの異常が原因なんです。 -
他のサイン
糖尿病と同じで、すごく食欲があるのに、どんどん痩せていっちゃうのが特徴です。
【要注意サイン】 3大疾患の症状セルフチェックリスト
この3つの病気、症状が似ているところもあって、ややこしいですよね。
下の表で、愛猫の様子を整理して、獣医さんと話すときに役立ててください!
| 症状 | 慢性腎臓病 | 糖尿病 | 甲状腺機能亢進症 |
|
お水の量 |
増える |
ものすごく増える |
増える |
|
食欲 |
だんだん落ちる |
増えるけど痩せる |
ものすごく増えるけど痩せる |
|
体重 |
減る |
減る |
減る |
|
元気 |
なくなる |
なくなる |
ありすぎる/攻撃的になることも |
|
その他 |
吐く、口が臭う |
尿がベタつく、後ろ足がふらつく |
よく鳴く、毛並みが悪くなる |
病気だけじゃない?お水を飲む量が増える「ストレス」の話

病気だけじゃない?お水を飲む量が増える「ストレス」の話
お水をたくさん飲む理由って、体の病気だけじゃないんです。実は、「心」の問題が隠れていることもあります。
《心因性多飲》 ストレスを紛らわすための行動かも
不安や退屈…。そんな心のモヤモヤから、体が必要としている以上にお水を飲んじゃうことがあります。
これは、猫がストレスをどうにかしようとしてやる「転位行動」っていうものの一つ。
これ、単なる「気のせい」じゃないんです。ずーっとストレスを感じていると、自律神経が乱れて、喉の渇きとかおしっこの習慣に直接影響することもあるんですよ。
ちなみに… ストレスが体の症状を引き起こすっていうのは、獣医さんの世界では当たり前のこととして知られています。
あなたのお家は大丈夫?猫のストレスチェック
愛猫の飲むお水の量が気になったら、こんなことがお家にないか、ちょっと振り返ってみましょう。
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環境の変化
引っ越し、模様替え、近所の工事の音、お客さんがよく来る、など。 -
家族の変化
新しいペットや赤ちゃんが来た、他の猫と仲が悪い、大好きだった家族やペットがいなくなった、など。 -
縄張りの不安
トイレが汚い、ご飯やお水の器が他の子と一緒、器が落ち着かない場所にある、など。 -
毎日の退屈
遊ぶ時間が足りない、飼い主さんの生活リズムが変わった、など。
ストレスのサインは他にも!こんな行動ありませんか?
ストレスが原因のときって、お水をたくさん飲む以外にも、いろんなサインが出ることが多いです。
こんな行動がいくつも見られたら、ストレスが原因の可能性が高いかも。
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隠れている時間が増えた
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体を舐めすぎて、毛が薄くなってきた
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トイレじゃないところでおしっこしちゃう
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ご飯を食べすぎたり、逆に食べなくなったり。元気すぎたり、ぐったりしたり。
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急に怒りっぽくなったり、怖がりになったりした
ここで大事なのは、ストレスと病気って、「どっちか一つ」って単純なものじゃないってこと。
二つは深く関係していて、悪いループを生み出すこともあります。
例えば、腎臓病の初期のちょっとした気持ち悪さがストレスになって、行動がおかしくなることも。逆に、ストレスで免疫力が下がって、病気が進んじゃうこともあります。
だから、お水をたくさん飲むようになったら、まずは必ず動物病院で診てもらって、病気の可能性がないかを確認するのがいちばん大事!
その上で、ストレスが大きな原因だって分かったり、病気の治療と一緒だったりする場合に、これからお話しするストレス対策をやってあげることが、愛猫の心と体の健康にとって、すっごく重要なんです。
愛猫のストレスを軽くしてあげよう!獣医さんおすすめの具体的な方法

愛猫のストレスを軽くしてあげよう!獣医さんおすすめの具体的な方法
これから紹介するのは、単に「猫が喜ぶこと」じゃないんです。
猫っていう動物が、心も体も健康でいるために、科学的に「これだけは必要だよ!」って言われていることなんです。
【対策1】 安心できる「自分の場所」を作ってあげる
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どうやるの?
キャットタワーや棚で、上下に動ける場所(垂直方向のスペース)と、段ボール箱や屋根付きベッドみたいな隠れ家を用意してあげましょう。 -
なんで効くの?
猫は、狩りをする動物だけど、自分より大きな動物には狙われる側でもあります。
高い場所は、自分の縄張りを見渡せる安全な見張り台。
狭い場所は、敵から身を守る避難所。この「安心したい!」っていう気持ちを満たしてあげることが、不安を和らげるのにすごく効果的なんです。
【対策2】 大事なもの(トイレ・ご飯)は、あちこちに置いてあげる
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どうやるの?
トイレ、ご飯、お水飲み場は、「猫の数+1個」を用意するのが「N+1ルール」。
そして、それを家の別々の場所に置いて、1匹が他の子の邪魔をできないようにしてあげて。 -
なんで効くの?
猫ちゃんはもともと、一人で狩りをする動物。
だから、大事なものをめぐって争うのを避けるようにできています。
ご飯を食べたり、おしっこしたりするのを、他の猫ちゃんのすぐ隣でしなきゃいけないのって、彼らにとっては大きなストレス。あちこちに置いてあげることで、猫本来の暮らし方を尊重してあげることになるんです。
【対策3】 遊びで「狩り」の本能を満たしてあげる
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どうやるの?
猫じゃらしみたいなオモチャで、1回10〜15分、1日に2回以上、狩りごっこをしてあげましょう。
ご飯の一部を、頭を使うオモチャ(パズルフィーダー)に入れて、自分で考えて食べさせるのもGood! -
なんで効くの?
「獲物を探して、捕まえて、しとめて、食べる」っていう一連の流れは、猫にとって絶対に必要な欲求。
これが満たされないと、退屈やイライラからストレスが生まれます。遊びは、猫の心の健康にとって、必須科目なんですよ!
【対策4】 「いつも通り」の、穏やかな時間を作ってあげる
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どうやるの?
ご飯、遊び、トイレ掃除の時間は、毎日なるべく同じにして、安定した日課を作ってあげましょう。撫でたり抱っこしたりするのは、猫の方からスリスリしてきた時に。 -
なんで効くの?
猫の世界では、「いつも通り」=「安全」ってこと。決まった日課は、猫に「自分の周りは大丈夫だ」っていう安心感を与えてくれて、それがストレスを軽くするお薬みたいになるんです。
【対策5】 猫のすごい「鼻」に気をつけてあげる
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どうやるの?
香りが強い芳香剤や洗剤、猫砂なんかは、猫ちゃんがよくいる場所の近くで使うのは避けてあげて。
新しい毛布とか、新しい同居猫を迎えるときは、それぞれのニオイがついた布を交換して、少しずつ慣れさせてあげる(ニオイの交換)といいですよ。 -
なんで効くの?
猫ちゃんは「ニオイ」で、自分の縄張りの中の「安全なもの」と「危険なもの」を判断しています。
知らない強いニオイでいっぱいだと、ずっと不安な気持ちにさせちゃう可能性があるんです。
飼い主さんが「今すぐやること」と「絶対にやっちゃダメなこと」

飼い主さんが「今すぐやること」と「絶対にやっちゃダメなこと」
愛猫がお水を飲む量が増えたことに気づいた今、冷静に行動することが何より大切です。
今すぐやること
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記録をつけてみよう!
まずは2日間、探偵になった気分で記録してみて!飲んだお水の量、おしっこの塊の大きさや回数、食欲、体重(測れたら)、そして「あれ?」って思った行動の変化をメモしましょう。 -
動物病院に電話!
記録をつけたら、すぐに病院に予約の電話を。そして、測った具体的な数字を獣医さんに伝えてください。「体重4kgの子が、1日250ml水を飲んでいます。
先月までは150mlくらいだったと思います」っていう報告は、診断のいちばんの近道になります。
絶対にやっちゃダメなこと
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お水を制限するのは絶対にダメ!
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なんで危険なの?
これ、飼い主さんがやりがちな、いちばん危ない間違いです。
もし腎臓病や糖尿病だったら、体は毒素や糖分を出すために必死でお水を必要としています。
そこでお水を制限するなんて、洪水のときに救命ボートを取り上げるようなもの。
急に体はカラカラになって、腎臓がさらに悪化して、数日で命に関わることもあります。
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「元気だからストレスでしょ」って自分で決めつけない!
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なんで危険なの?
元気に見えるのは、猫がそう見せているだけかもしれません。
病気は、早く見つけて治療を始めれば、その後の生活の質(QOL)や寿命が大きく変わります。
ぐったりするまで待つのは、取り返しのつかないダメージが進むのを、ただ見ているのと同じことなんです。
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あなたの「あれ?」が、愛猫の未来を救うかも!

あなたの「あれ?」が、愛猫の未来を救うかも!
今回のまとめ
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猫ちゃんが1日に飲むお水は、体重1kgあたり60mlまでが目安だよ
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お水の量とおしっこの記録が、診断の大きなヒントになる!
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元気そうでも「きっと大丈夫」はNG!まずは動物病院に相談しよう
愛猫がお水をたくさん飲むようになったら、それは、たとえ元気に見えても絶対に見過ごしちゃいけない大事なサインです。
治療できる病気の、最初のサインである可能性がいつだってあるんです。
診断の結果がどうであれ、愛猫が安心して暮らせるように環境を整えて、心を満たしてあげることは、すべての猫ちゃんにとって健康管理の基本です。
ストレスが少ないお家は、病気の子の回復を助けるし、元気な子の病気を予防します。
愛猫のこの小さな変化に気づけたあなたは、もうすでに、すごく大事な一歩を踏み出しています。
あなたは、愛猫にとって最高の、そしていちばん信頼できるパートナーです。
自分の直感を信じて、客観的な記録を集めて、そして獣医さんとチームを組んでください。
それが、愛する家族に贈れる、最高のプレゼントなんですよ。

