【猫の留守番】ストレスの原因は？ケージはNG？

現代の都市環境では、猫ちゃんの完全室内飼育が推奨されていますよね。
でも、飼い主さんがいない時の管理方法として、「自由にさせるか、ケージに入れるか」は、多くの飼い主さんにとって悩ましい問題なんじゃないでしょうか。

この記事では、最新の獣医学や動物行動学、環境省の飼養管理基準をもとに、猫ちゃんにとって自然で幸せな留守番環境を作るための詳しい分析と、今日からできるアドバイスをお届けしますね。

猫の「留守番」におけるストレス要因の科学的メカニズム

留守番中のストレスって、単なる「寂しさ」だけではないんです。実は、神経やホルモンの働きを通じて、病気を引き起こしてしまう具体的なリスク要因でもあるんですよ。

縄張り（テリトリー）意識と環境変化

猫ちゃんにとっての「安心」とは、「予測できること」なんです。いつもの場所にいつもの家具があって、いつものルーチンが守られていることがとっても大切なんですね。

• 安全基地がなくなってしまう
  飼い主さんは猫ちゃんにとって「動くテリトリー」であり、「安全基地（Secure Base）」でもあるんです。だから、飼い主さんがいないということは、安心できる場所が揺らいでしまうことを意味するんですよ。

• 音が聞こえすぎてしまう
  60kHzまで聞こえる猫ちゃんの耳にとって、静かなお部屋に響く外の音（工事の音や雷など）は、飼い主さんがいない状況だと「未知の脅威」になってしまって、神経を刺激し続けてしまうんです。

ストレスは病気の原因にも…特発性膀胱炎（FIC）のリスク

留守番のストレスを考える上で一番大切なのが、特発性膀胱炎（FIC）なんです。

FICのメカニズム（脳と膀胱の関係）

1. 交感神経が高ぶる
   不安だったり閉じ込められたりすることで、交感神経がずっと興奮状態になっちゃうんです。

2. ホルモンが出る
   そうすると、カテコールアミンというストレスホルモンが出すぎてしまいます。

3. 膀胱を守る壁が壊れる
   ホルモンの影響で、膀胱の内側を守っている層（GAG層）が薄くなってしまうんです。

4. 炎症と痛み
   おしっこの成分が神経を刺激して、痛みが出てしまいます。これがまた新たなストレスになって、悪循環（ペイン・サイクル）になっちゃうんですね。

分離不安症候群

ワンちゃんだけでなく、猫ちゃんにも分離不安はあるんです。

• 症状
  出かけた直後に大声で鳴いたり、ドアを壊そうとしたり、トイレ以外の場所（特に飼い主さんのベッド）でしちゃったり、毛づくろいをしすぎたりすることです。

• リスク
  不安を紛らわせようとして、異物を飲み込んでしまう事故のリスクもあります。

猫の留守番とケージ利用の限界点とは

ケージは使い方次第で、猫ちゃんにとっての「聖域」にもなるし、「牢獄」にもなっちゃうんです。

ケージ利用がおすすめなケース

• 子猫期（生後半年未満）
  危険を予知できない猫ちゃんを守るための、誤飲や感電防止のためですね。それに、成長に必要な睡眠時間（約20時間）をしっかり確保するためにも大切なんです。

• 災害・緊急時
  避難所での生活や入院が必要になった時に、スムーズに適応できるようにするためです（トリアージ）。

よくない使い方によるリスク（Negative）

• 運動不足
  上下に動けない場所に長時間閉じ込められると、ストレスや肥満の原因になっちゃいます。

• 衛生問題
  ご飯を食べる場所とトイレが近すぎると、猫ちゃんはとっても嫌がりますし、ネグレクトに近い状態になってしまう可能性もあるんです。

ケージでのお留守番、時間の目安

環境省基準と獣医師推奨の「正しいケージ」とは

必須スペック（環境省・飼養管理基準準拠）

• 高さ
  体高の4倍以上必要です。大人の猫ちゃんなら**3段ケージ（高さ120cm以上）**が最低限の基準になりますね。

• 構造
  上り下りできる棚板（ステップ）があることが大切です。

理想的なレイアウト

• 1階（衛生）
  トイレです。砂が飛び散らないようにガード付きがおすすめですよ。

• 2階（飲食）
  1階から離して設置してあげてくださいね。お水は給水ノズルと器のダブル使いが安心です。

• 3階（休息）
  一番安心できる一番上に、ベッドやハンモックを。ここを「聖域」にしてあげましょう。

設置場所のNGとOK

• NG
  直射日光が当たる場所（熱中症になっちゃいます）、エアコンの風が直接当たる場所（風邪をひいちゃいます）、テレビやドアの近く（うるさいと落ち着きません）。

• OK
  お部屋の隅っこ（壁際）。死角が減るので、猫ちゃんも安心できるんです。

ライフステージ別・最適留守番スタイル

子猫（〜6ヶ月）：安全第一「ケージ必須」

• 戦略
  しっかり守って、しっかり休ませてあげること。

• 対策
  4時間を超える場合はシッターさんにお願いしてみてください。帰宅後はケージから出して、たくさん遊んで社会化させてあげましょうね。

成猫（1〜7歳）：自律「フリー or ゾーニング」

• 戦略
  誤飲癖やパニック癖がないことが条件になります。

• ケージの役割変更
  扉を開けっ放しにして、「いつでも逃げ込めるシェルター」として使わせてあげてください。

高齢猫（7歳以上）：ケア重視「バリアフリー」

• 戦略
  横移動中心の生活にしてあげましょう。

• 対策
  ケージではなく、段差の少ないフラットな環境へ。見守りカメラやスマートトイレで健康状態を見守ってあげてくださいね。

【猫の留守番】ケージなし（フリー）のリスク管理

お部屋全体を「安全な巨大ケージ」にする必要があるんです。

誤飲・誤食の徹底排除（トリアージ）

• 命に関わるもの (High)
  紐、リボン、輪ゴム（腸閉塞の原因になっちゃいます）、ユリ科の植物（中毒）、お薬など。

  • 対策: ロック付きのゴミ箱を使ったり、引き出しにしまったりしてくださいね。

• 事故につながるもの (Medium)
  電気コード（感電）、お風呂の残り湯（溺死）。

  • 対策: コードカバーをつけたり、お風呂場には入れないようにしましょう。

脱走防止

• 玄関・窓: 二重扉や脱走防止柵の設置が欠かせません。網戸はロックだけじゃなくて、金属フェンスなどでガードすることをおすすめします。

環境エンリッチメント

• 窓からの眺め
  安全な窓辺にタワーを置いてあげましょう。

• 狩猟本能
  フードパズル（知育玩具）を使って、退屈しないようにしてあげてくださいね。

猫の留守番…飼い主さんのチェックリスト

以下の項目をチェックして、今の留守番環境を見直してみてくださいね。

安全性評価 (Safety)

• 床に紐、ビニール、小物、お薬が落ちていませんか？

• 観葉植物やアロマは片付けてありますか？

• 玄関・窓の脱走防止柵はしっかりロックされていますか？

• お風呂場のドアは閉まっていますか（お水は抜いてありますか）？

環境評価 (Environment)

• トイレは「猫ちゃんの数 + 1個」用意されていますか？

• お水飲み場は何か所かにあって、倒れない容器ですか？

• 室温は20〜28度で、猫ちゃんが自分で調節できる場所（涼しい場所/暖かい場所）がありますか？

• 上下運動ができるタワーや家具はありますか？

ケージ評価 (Cage Utilization)

• （使う場合）3段以上の高さ、または十分な広さがありますか？

• トイレとご飯の場所は離れていますか？

• 普段から猫ちゃんが休憩場所として使っていますか（慣れていますか）？

緊急時対応 (Emergency)

• 災害用キャリーバッグはすぐに取り出せますか？

• かかりつけのお医者さんの連絡先はわかりますか？

• 見守りカメラなどはちゃんと動いていますか？

猫の留守番とケージによるストレス…まとめ

猫ちゃんにとって一番いい留守番環境とは、ケージかフリーかどちらか一方ではなく、「猫ちゃん自身が安全な場所を選べる自由（Choice and Control）」があることなんです。
飼い主さんが事前にしっかりと環境を整えてあげること（予防）こそが、最大の愛情表現になるんですよ。

参考文献・出典

• 環境省「猫の飼養管理基準 ガイドライン」

• 環境省「猫 完全室内飼い ガイドライン」

• 埼玉動物医療センター「ストレスで膀胱炎！（猫の特発性膀胱炎について）」

• 日本獣医師会、動物愛護管理法関連資料 ほか